26.03.01 妊娠中の甲状腺機能の生理的変化
妊娠時にエストロゲンの増加によって サイロキシン結合タンパクが増加し、血中総サイロキシンは増加するが、生理作用を発揮するFT4はTBGの増加の影響を受けないため、当院では妊娠中の甲状腺機能の評価にはFT4を用います。
着床後に、絨毛組織から産生される性腺刺激ホルモンである、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、妊娠8~10週をピークに分泌され、わずかな甲状腺刺激作用を有するため、妊娠初期にはFT4の軽度上昇とTSHの軽度低下をしばしば認めます。
妊娠初期にはFT4の軽度上昇とTSHの軽度低下をしばしば認める。
妊娠初期は妊婦の約10%のTSH値は低下もしくは抑制されていることから、TSHの抑制とFT4が少なくとも非妊娠時の基準値上限より増加していることで、甲状腺機能亢進症を診断する。
妊娠中・後期にはFT4は非妊娠時に比べて低値を示すことが多い。
TSHの上限値はおよそ4.0μIU/mL、もしくは基準値上限値-0.5μIU/mLと考えて管理を行う。
妊娠後半は正常妊婦であっても、FT3値とFT4値は一般基準値に比較して低値を示すことが多いので、TSH値とともに甲状腺機能の状態を判断する。
多胎妊娠や胎児異常のためにhCG高値が持続する場合があり、妊娠中期以降でもhCGによる甲状腺機能亢進症を示すこともある。
胎児の甲状腺機能>
妊娠12週頃から胎児の甲状腺は機能を開始する。
妊娠18〜20週以降には胎児の下垂体―甲状腺系も完成することから、妊娠中のバセドウ病の管理の際には母児ともに病態を考える必要がある。
(胎児甲状腺は10〜12週からヨード摂取し始め、18〜20週にT4分泌し始めることから、胎児甲状腺を考慮する時期は妊娠20週頃からとなる。 2014年の文献)
妊娠中の甲状腺機能亢進症の鑑別>
|
|
頻度 |
時期 |
TRAb |
甲状腺腫 |
特徴 |
治療 |
|
HCGによる一過性甲状腺機能亢進症 |
2~4% |
妊娠10週をピークに15週くらいまで |
− |
− |
多胎、双胎間輸血症候群、胎児異常など、胎盤からのhCG分泌亢進する例では長引くことがある。 |
一般的には治療の必要はない。症状のひどい時はKI5〜10mg/日。 |
|
バセドウ病 |
0.1~0.5% |
妊娠前から |
+ |
びまん性 |
妊娠10週をピークに一時悪化するが、その後約8割は改善傾向にある。 |
妊娠初期はPTUかKI。 妊娠16週(必要な際は、10週)以降はMMIが第一選択。 母体の薬物療法は胎児の治療にもなる。 |
|
機能性甲状腺結節・機能性甲状腺腫 |
稀 |
妊娠前から |
− |
結節、多結節性 |
妊娠10週をピークに悪化し、妊娠中は妊娠前より機能亢進になりやすい。 |
|
参考文献:荒田尚子 日内会誌113:635-640,2024 一部改




