バセドウ病患者の生活指導、合併症と治療、特殊な病態
バセドウ病患者の生活指導
喫煙はバセドウ病の発症リスクを増加させ、抗甲状腺薬による治療に対する抵抗性を惹起し、寛解後の再発率を上昇させる。また甲状腺眼症の発症リスクも上昇させ、治療抵抗症を引き起こすため、禁煙を強く勧めたい。
精神的、身体的ストレスがバセドウ病の増悪因子となりうるため、ストレス回避や軽減のために生活指導が必要である。
合併症と治療、特殊な病態
バセドウ病の合併症には、甲状腺中毒性周期性四肢麻痺や骨粗鬆症、甲状腺クリーゼなどがある。
・骨粗鬆症では、抗甲状腺薬による治療により骨密度が増加する可能性がある。
・バセドウ病の甲状腺以外の症状としては、甲状腺眼症が最も多く、約25%に認められる。
・甲状腺中毒性周期性四肢麻痺は、甲状腺中毒症患者において、細胞内へのカリウムの移動に伴い、体内カリウムは充足しているが、血清カリウムが低下することで、細胞膜の極性や筋肉の興奮性に異常が起こり、麻痺に至る病態である。
初期治療>カリウムの補正を行う。発症予防のため誘因となる。高炭水化物摂取、アルコール摂取、過度の運動を避けるように指導する。
誘因となる薬剤使用(β2アドレナリン作動薬、副腎皮質ホルモン、アセタゾールアミド、過剰な甲状腺ホルモン薬)に注意し、使用を避ける。
・甲状腺クリーゼに関しては、甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017を参照する。
・潜在性甲状腺機能亢進症:この病態はTSHを複数回測定して、TSH低値が3〜6ヶ月持続することを確認し、バセドウ病や機能性甲状腺結節、薬剤性などの原因疾患の検索を行う。T SH値0.1mU/L未満が持続する症例では、65歳以上の場合やまたは65歳未満でも、心血管リスク因子や心疾患、骨粗鬆症、甲状腺機能亢進症状がある場合は治療が望ましい。
吉野聡 他, 日内会誌 111:2279-2284, 2022