メニュー

131I内用療法

131I内用療法の適応と禁忌を表2に示す。

131I内用療法の適応と禁忌

絶対的適応

抗甲状腺薬で重篤な副作用が出たとき(無顆粒球症、重症肝障害など)

MMI、PTUがともに副作用で使用できない時

相対的適応

抗甲状腺薬治療や手術治療を希望しない時

抗甲状腺薬で寛解に至らず、薬物療法の継続を希望しない時

手術後にバセドウ病を再発した時

甲状腺機能亢進症を確実に治したい時

甲状腺腫を小さくしたい時

心臓病、肝臓病、糖尿病などの慢性疾患を持っている時

絶対的禁忌

妊娠、妊娠している可能性のある女性、6ヶ月以内に妊娠する可能性のある女性

授乳婦

相対的禁忌

原則として18歳以下(6歳から18歳:薬物療法、外科手術が困難な場合のみ容認される。5歳未満は禁忌)

重症甲状腺眼症

事前に患者と確認しておくべき事>

・治療により必ずしも甲状腺機能亢進症が早期に是正されるとは限らないこと。

・永続性の甲状腺機能低下症に陥り終生にわたる甲状腺ホルモン薬の内服が必要になる可能性があること。

・治療後に甲状腺眼症が悪化する可能性があること。

以上について考慮と説明が必要である。

適応年齢>

18歳以下のバセドウ病患者に131I内用療法を行うにあたっても、最も懸念されるのは、甲状腺癌、及び甲状腺以外の悪性腫瘍発症リスクの増加である。

131I内用療法を受けた18歳以下のバセドウ病患者において、甲状腺癌、甲状腺以外の悪性腫瘍について充分な対象者数で検討した研究はないが、理論的には年齢が低いほど発癌リスク上昇が否定できないため、5歳未満では禁忌であることが強く推奨された。

しかしながら、18歳未満のバセドウ病患者では131I内用療法と抗甲状腺薬を比較し、寛解率が高く、他の合併症が少ないという報告があるため、6〜18歳以下のバセドウ病患者において、薬物療法で重篤な副作用が発症した症例や治療抵抗性の症例で、外科治療も困難な場合のみ容認されると弱く推奨された。

131I内用療法の理想的な目標は、甲状腺機能が短期間で正常になり、その状態が長時間継続することであるが、そのための確実な131I投与量の決定方法は確立していない。そのため、機能正常を目指すか、早期の機能低下を目指して治療するかは、それぞれメリット、デメリットを説明した上で、患者の意向を優先して決める必要がある。

前処置>

治療1週間以上前からのヨウ素制限、治療3日以上前からの抗甲状腺薬中止が望ましいが、甲状腺機能の十分なコントロールとそれに見合った抗甲状腺薬の中止期間を決める必要がある。治療後の6ヶ月間は1ヵ月毎に甲状腺機能検査を行うことが望ましく、その後は甲状腺機能低下に注意して経過観察を行う。

131I内用療法後の再発の頻度は15%程度とされる。治療効果判定をおよそ6ヶ月から1年程度で判定できる。そのため、再治療の適応については、短期間で甲状腺機能を低下することを目指した場合は、治療後6ヶ月から1年経過しても、抗甲状腺薬を中止できない場合に検討する。甲状腺機能正常を目指した治療を行った場合は、1年以上経過して抗甲状腺薬を維持量まで減量できない場合や甲状腺腫の縮小が十分でない場合に検討する。

治療の後の挙児計画>

・女性の場合、治療後6ヶ月を過ぎてから許可するのが合理的である。

・男性の場合、精子への被曝の点から4ヶ月を過ぎてから行うことが推奨され、さらに甲状腺機能安定化の点から可能な限り6ヶ月過ぎてから行うことが弱く推奨された。

131I内用療法によって眼症の新規発症や悪化が認められるため、活動性や重症度の高い眼症患者では避けるべきである。

吉野聡 他, 日内会誌 111:2279-2284, 2022

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME