脂質異常症
血清コレステロールや血清トリグリセライドの異常高値を示す「高脂血症」とHDLコレステロールの異常低値等を総称して、2007年より脂質異常症と呼ぶようになった。いずれも、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の危険因子であるため、早期発見・早期治療が重要である。
脂質異常症の治療の意義>
・自覚症状がほとんどない。しかし、放置すると全身の血管の動脈硬化が徐々に進み、これによって心筋梗塞、脳梗塞などの重大な合併症が出現する。
・したがって、動脈硬化の予防、進展の阻止を主たる目標にして治療する。
脂質異常症の診断基準>
・10~12時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
治療
生活習慣の改善>
①禁煙し、受動喫煙を回避する。
②過食を抑え、標準体重を維持する。
③肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす。
④野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす。
⑤食塩を多く含む食品の摂取を控える。
⑥アルコールの過剰摂取を控える。
⑦有酸素運動を毎日30分以上行う。
運動療法
・運動は、血清脂質の改善、血圧低下、インスリン抵抗性の改善などをもたらし、動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームの予防・治療効果がある。
。運動に際しては、筋骨格系の障害、突然死や心筋梗塞の発生(特に心血管系疾患をもつ患者)に十分配慮する。食直後の運動や過度の運動は避ける。また、重篤な心疾患やコントロールの悪い糖尿病などでは運動療法は禁忌である。
運動療法指針
運動強度 | 最大酸素摂取量の約50% |
量・頻度 |
1日30分以上(できれば毎日) 週180分以上 |
種類 | ・速歩 ・スロージョギング ・社交ダンス ・水泳 ・サイクリング ・ベンチステップ運動 等 |
脂質降下薬のまとめ
場合によっては多剤併用療法も行われるが、腎機能障害でのスタチンとフィブラート系薬剤の併用は、横紋筋融解症を発症しやすくなるため、原則禁忌である。
種類 |
商品名 |
脂質低下効果 |
主な副作用 |
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LDL-C |
TC |
TG |
HDL-C |
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コレステロールを下げる薬 |
HMG-CoA還元酵素阻害薬 (スタチン) |
メバロチン |
↓↓↓ |
↓↓ |
↓ |
↑ |
・横紋筋融解症 ・筋肉痛、脱力、CK上昇 ・消化器症状 ・肝障害 ・末梢神経障害 |
リポバス |
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ローコール |
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リピトール |
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リバロ |
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クレストール |
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小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ) |
ゼチーア |
↓↓ |
↓ |
↓ |
↑ |
・消化器症状 ・肝障害 ・CK上昇 |
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陰イオン交換樹脂(レジン) |
コレバイン |
↓↓ |
↓ |
― |
↑ |
・便秘、腹部膨満感 ・脂溶性ビタミンの吸収障害 |
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クエストラン |
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プロブコール |
シンレスタール ロレルコ |
↓ |
↓ |
― |
↓↓ |
・QT延長 ・消化器症状 ・肝障害 |
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主にトリグリセライドを下げる薬 |
フィブラート系薬剤 |
ベザトールSR ベザリップ |
↓ |
↓ |
↓↓↓ |
↑ |
・消化器症状 ・横紋筋融解症、CK上昇 ・肝障害 ・胆石 |
リピディル トライコア |
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ビノグラック |
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リポクリン |
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ニコチン酸誘導体 |
ユベラN |
↓ |
↓ |
↓↓ |
↑ |
・顔面紅潮、頭痛 ・耐糖能障害 ・消化器症状 ・高尿酸血症 |
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ペリシット |
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コレキサチン |
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EPA |
エパデール ソルミラン |
― |
― |
↓ |
― |
・出血傾向 ・発疹 など |